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かつての私へ「あこがれのスタァ」

さて、那覇市議会議員選挙、参議院議員選挙も三日攻防に突入しました。

以前、ケーブルテレビ時代に、琉球新報の文化面でのリレーエッセイ「落ち穂」に
連載をさせて頂きました。
その際に、選挙に関するこんなエッセーを載せてもらいました。

自戒の念も込めまして、転載します。

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「あこがれのスタァ」

前泊美紀(OCNキャスター)

 私が育った地域は那覇市の郊外、小高い丘の新興住宅地である。
県内外から集まった世帯には、私と同世代の子どもが多くいた。
学校から帰ってくると、みんなでよく遊んだ。
幼い子にあるように、時には男女に分かれてケンカもした。
その私たちが、一致団結して楽しむ一大イベントがあった。
選挙戦だ。

 選挙戦が始まると、私たちの心は逸る。お気に入りの候補者の選挙カーが
地域を通ると、私たちは摘み集めた花を両手に持ち、道の両脇に並び、
候補者の名前を叫びながら「がんばれー!」と花々を投げた。

子どもに人気だったのは、優しい笑顔のおじさんだ。
こわもてのオジサンは人気がなく、花の変わりに小石を投げつけた。
(ごめんあさい!)
とりわけ好きな候補者の車は、皆で力尽きるまで追いかけた。

丘から見下ろすサトウキビ畑の中の一本道を行く選挙カーにも、
大きな声と身ぶりで声援をおくった。
選挙カーから降りた候補者に「おじさん、握手して!」一人が切り出すと、
僕も私もと群がった。

若い候補者が出ると、女子は男子から
「おまえ○○(若い候補者の名前)とデキてるだろ」と
意味不明なからかいを受けた。

 ある日、候補者が演説する選挙カーの周りで遊んでいると、
一人の子が転んでけがをした。
演説を終えた候補者がその子に駆け寄り、傷を診ながら声をかけた。
「あいつ、○○(候補者の名)さんとしゃぺった!」
その一件からしばらく彼はヒーローとなり、皆の羨望のまなざしを集めた。

 子どもたちのまなざしは、候補者だけでなく、選挙カーから手を振り
美声を飛ばすウグイス嬢にも向けられた。ウグイス嬢ごっこが流行った。
「かわいいご声援ありがとうございます」の声に、
「ゴセンエン(五千円)あげてないよ」と答える子もいた。
ウグイス嬢のお姉ちゃんからもらう飴玉は、貴重で自慢だった。

 選挙カーの上でマイクを握り熱弁を振るう候補者は、「おじさん」だって「オジサン」だって、子どもたちの憧れの存在だった。

 選挙の多い沖縄の今年。候補者は今も、子どもたちの
「あこがれのスタァ」であり続けているだろうか。

— 琉球新報 文化面「落ち穂」2006.10.25
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